ページの先頭です。 ページの本文へ メインメニューへ フッタへ

石炭ガス化技術篇 未来を救う新エネルギーを創り出せ。石炭の新たな可能性を拓く、25年の苦闘を制した挑戦者たち。 資源に乏しい日本が、安定したエネルギー供給を維持していくために石炭が重要な鍵を握っている。世界で最も埋蔵量の多いこの資源を、クリーンな燃料ガスに変え、高効率発電などにつなげる「石炭ガス化技術」。その開発に懸けたエンジニアたちの、25年にわたる苦闘と挑戦に迫る。

  • 開発物語
  • 技術・プロジェクトのご紹介

前例なき新方式への挑戦。世界のエネルギー市場を一変する石炭ガス化独自技術を開発。

「石炭ガス化技術」とは、石炭を蒸し焼きにして熱分解反応を起こし、水素や一酸化炭素を主成分とする燃料ガスを生成する技術です。石炭から出るCO2や大気汚染物質の排出量を抑制し、発電や化成品製造などへ幅広く事業展開できる技術として世界の注目を集めています。三菱重工は、25年にわたる地道な努力と挑戦を続け、世界で唯一、空気吹き方式と酸素吹き方式の双方の石炭ガス化技術を開発。1種の炉で空気吹き・酸素吹き双方に対応し、従来は使用できなかった炭種の活用まで可能にしました。そして今、次世代エネルギーを支えるこの技術の普及に向けて、新たなる挑戦を続けています。
今回はこの「石炭ガス化技術」の特長や開発の舞台裏について、石炭ガス化複合発電(IGCC:Integrated coal Gasification Combined Cycle)プロジェクトを手掛ける6名に話を聞きました。

開発スタッフ

写真:開発スタッフ
  • 横濱 克彦
    技術統括本部
    長崎研究所
    燃焼研究室
    主席研究員
  • 小山 智規
    技術統括本部
    長崎研究所
    燃焼研究室
    主席研究員
  • 品田 治
    原動機事業本部
    ボイラ統括技術部
    主席技師
    (IGCC実証機
    プロジェクトマネージャー)
  • 坂本 康一
    エンジニアリング本部
    IGCC・ガス化プロジェクト室
    室長
  • 吉田 斎臣
    エンジニアリング本部
    電力プロジェクト総括部
    電力計画部
    IGCCグループ長
  • 柴田 泰成
    原動機事業本部
    ボイラ統括技術部
    ボイラ計画設計課
    IGCCチーム
    主席チーム統括

開発の契機

未来を支える発電技術 IGCC開発にむけて国家プロジェクトが始動。

石炭ガス化技術開発の契機となったのが、1970年代に起きた2度のオイルショック。エネルギーセキュリティーの重要性が再認識され、石油依存度の低減につながる新エネルギー技術の研究・開発を目的とし、石炭の有効活用に関する国家プロジェクトが開始されました。そのひとつが“石炭ガス化複合発電(IGCC)”。まず石炭から生成した可燃性ガスを燃料としてガスタービンを回して発電し、さらにその排熱を使って蒸気タービンを回して2度目の発電を行う方式で、既存の石炭焚き火力発電と比較して約20パーセントも発電効率を高められるシステムです。そのIGCC開発にむけて、まず三菱重工が世界初となる“空気吹き”石炭ガス化技術開発に着手することになりました。

「当時、欧米でも石炭ガス化技術の開発に取り組んでいましたが、その多くは化成品製造を目的としていました。石炭のガス化のために酸素を使用する“酸素吹き”と呼ばれる方式が主流ですが、これには酸素製造装置(ASU:Air Separation Unit)という空気から窒素を取り除く補機が必要なのです。一方で我々は発電技術として開発をスタートしています。多くの電力を作りたいのに、電力消費が甚大なASUを使うのは効率が悪いと考えたのです。同時にASUが不要となれば設備費を大幅にコストダウンできます。そこで私たちは、世界で初めて酸素製造の影響をなくした “空気吹き”石炭ガス化技術に挑み、世界最高効率のIGCC(石炭ガス化複合発電)を成し遂げたいと思ったのです。
しかし、空気吹きは非常に技術的ハードルが高い。一般的に、空気吹きで生成する石炭ガスの方が燃料成分(一酸化炭素や水素)は希薄になります。つまり、より低カロリーな燃料でガスタービンを運転させ、なおかつ発電効率を高めなければなりません。当時は、どの欧米メーカーも『IGCCに空気吹きを適用するのは不可能だ』と笑っていたほどです」。(坂本)

坂本インタビュー写真
三菱空気吹きIGCCシステム
図:三菱空気吹きIGCCシステム
写真:IGCC

こうして三菱重工は、1983年に世界初となる空気吹き噴流床石炭ガス化炉の開発に着手します。そして1989年に国家プロジェクトとして、IGCCの大型試験施設“200トン/日噴流床石炭ガス化発電パイロットプラント(注)”の建設がスタートしました。

(注)1日に200トンの石炭処理能力をもつガス化炉を装備。電力出力は2.5万キロワット相当。

次へ:25年にわたる開発が始動