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常温ウェーハ接合装置篇 夢の接合技術をものづくりの最前線へ。半導体製造プロセスの常識を変えた、7人の精鋭たち2つの物質を、接着剤や熱を使わずに強力にくっつける「常温接合」技術。まるで魔法のようなこの技術を、ものづくりに生かしたい。その思いと、悩みを抱える半導体デバイスメーカーのニーズが一致し、世界初となる産業装置開発に向けて、精鋭たちの挑戦が幕をあける。

  • 開発物語
  • 製品・技術のご紹介

「常温接合」技術を、ものづくりの現場へ。研究者と設計者が結束。

接着剤はもちろん熱や水も使わずに、常温(室温)で2つの物質を強力にくっつける「常温接合」技術。この技術は、原子が常に何かと結合しようとする性質を利用したもの。物質の表面は目には見えない酸素の膜で覆われていますが、この膜を取り除くと原子間の結合の手が表面に露出し、再び何かと結合しようとします 。この特性は、人工衛星の部品同士が宇宙で固着する謎を解明していくなかで発見され、日本で研究が進められてきました。三菱重工の「先進技術研究センター」では独立行政法人産業技術総合研究所(注)と常温接合技術の共同研究を行うとともに、工作機械事業本部と一体となり製品化に着手。半導体デバイス製造メーカーで使用される「常温ウェーハ接合装置」を、2005年に世界で初めて産業用に開発しました。
今回はこの「常温ウェーハ接合装置」の特長や技術的挑戦について、プロジェクトを手掛ける7名に話を聞きました。
 (注)略称、産総研。常温接合は以前から東京大学やこの産総研で積極的に研究が進められている。

開発スタッフ

写真:開発スタッフ
工作機械事業本部 技術部 主幹技師、常温接合装置プロジェクトマネージャ 井手 健介、技術統括本部 先進技術研究センター 主席研究員 後藤 崇之、技術統括本部 先進技術研究センター主席研究員 内海 淳、技術統括本部 先進技術研究センター 主任研究員 津野 武志、技術統括本部 先進技術研究センター 主任研究員 木ノ内 雅人、技術統括本部 先進技術研究センター 堤 圭一郎、工作機械事業本部 技術部 主任 鈴木 毅典

開発の契機

常温接合の特長を最大限発揮。デバイスへの熱ダメージを解消する常温ウェーハ接合装置を開発。

常温ウェーハ接合装置は、パソコンのメモリや携帯電話のセンサなどを製造する半導体デバイスメーカーで使用される装置です。例えば、加速度センサや圧力センサ等のデバイスは、円形のウェーハと呼ばれる直径100~300 ミリメートル・薄さ0.5ミリメートルほどの半導体基板の上で、一度に数千個から数万個が製造されます。このウェーハの上に封止用ウェーハを接合してパッケージングしたり、ウェーハに機能性を持たせるために異種材料のウェーハを接合したりするのに使われるのがウェーハ接合装置です。三菱重工では、このウェーハ接合装置に「常温接合」技術を取り入れ、市場の常識を変える新たな装置を開発しました。

ウェーハ

写真:ウェーハ

ウェーハパッケージングのイメージ図

イラスト:ウェーハパッケージングのイメージ図。封止用ウェーハ、MEMSデバイスウェーハ、接合(封止)、切断(チップ化)

「従来のウェーハ接合装置は、いずれも200度~500度 もの熱をかけてウェーハとウェーハを接合していました。一方で、半導体デバイスは大きさ数ミリほどで、その内部は非常に微細かつ複雑な構造で設計されています。とてもセンシティブな製品なのに、高温で接合するため、熱による膨張やひずみが生じてしまう。その結果、 不良デバイスが生じ、歩留まりの低下を引き起こしていたのです。
『ウェーハを加熱せずに接合したい』というMEMS(Micro Electro Mechanical Systems(注))メーカーのデバイス開発担当者と、『常温接合技術をものづくりに生かしたい』という私たちの思いが一致し、誕生したのが常温ウェーハ接合装置です。ウェーハを常温(室温)で接合できるため、熱の影響がなくデバイスの品質が安定します。また、熱ひずみがないためデバイスをより小さく設計できます。そのため、1枚のウェーハに製造できるデバイスの数 が増え、デバイス一つひとつのコストダウンにもつながります。その他にも、加熱・冷却がいらないため製造時間が大幅に短縮できたり、多様な材料に適用できたりと、さまざまなメリットをもたらします。シリコンや石英、金属、化合物半導体、酸化物単結晶など半導体デバイスに使うほぼすべての素材に適応できるため、デバイス開発・設計の自由度を大きく広げる装置です」(井手)
 (注)機械要素を含むデバイス。加速度センサ、圧力センサ、インクジェットヘッド、ジャイロ、バイオデバイスなどがある。

井手のインタビュー写真
後藤のインタビュー写真

「試作用の接合装置であれば、接合ミスも有り得ることですが、お客様の生産現場で使用される産業用装置となると、そうはいきません。100回の接合を行ったら、100回とも確実に接合できなければならない。産業用装置を開発するには、接合の高精度化とともに、操作の自動化も必要となります。接合する2枚のウェーハの位置を精密に合わせるアライメント機構を開発したり、ウェーハを自動搬送するロボットを搭載したり、じつに多様な要素を組みこまなければなりません。そこで、この産業用装置を世界で初めて開発するにあたり、最高の技術者たちを呼び集めました。ナノ加工や光デバイス技術などの専門知識に長けているだけでなく、機械も電子も何でもできる マルチタレントの技術者ばかり。そんなゴールデンメンバーを集め、全員野球で製品開発をスタートしました」(後藤)

こうして2004年6月から井手、後藤を中心に常温ウェーハ接合装置の設計に着手します。そして2005年2月、メンバーのたゆまぬ努力と抜群のチームワークが実を結び、わずか8カ月という驚異的なスピードで、世界初となる産業用「常温ウェーハ接合装置」の開発に成功しました。その後、対応ウェーハサイズの拡大や、3次元積層デバイス向け製品の開発を進め、市場に本格参入していきます。他社製品とは一線 を画す三菱重工の「常温ウェーハ接合装置」。そこには装置の信頼性を高める技術の数々が搭載されています。

常温ウェーハ接合装置の製品画像
全自動接合装置 MWB-04/06/08AX

半自動接合装置 MWB-04/06R
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