Press Information

「Best Innovation 2010」
次世代ガスタービン向けコーティング技術や空気潤滑システムなど17件を選定

発行 第 5018号
Print

 三菱重工業は、1600℃級次世代ガスタービンを実現する高耐久性遮熱コーティング技術や、泡のはたらきで船舶と水の摩擦抵抗を減らす空気潤滑システムなど17件を、「Best Innovation(ベストイノベーション)2010」に選定した。

 「Best Innovation」は、当社の創造的な新製品、新技術、新事業を対象とした社内表彰制度で、「新製品賞」、「新業務プロセス賞」、「特別賞/新技術賞」、「特別賞/イメージアップ賞」などからなる。今回は、社内の各部署およびグループ会社から応募のあった23件の中から、新規性、事業規模、技術の高度性、イメージアップ度などを評価し、審査・選定した。

 その結果、当社の高い技術力を示した新製品賞には、舶用エンジンの排ガスで発電することにより航海中の省エネに貢献する舶用ハイブリッド過給機など4件が、生産性や業務効率の向上に寄与する取り組みを対象とした新業務プロセス賞には、遠隔監視システムを用いたガスタービンプラントの異常診断など8件が選ばれた。また、世界初の革新的な技術が表彰対象となる特別賞/新技術賞には、次世代リージョナルジェット機MRJ主翼耐雷(防爆)開発・設計・証明を実現可能とした大規模シミュレーション技術など3件が選定され、仕事と育児の両立支援を目指す当社初の企業内保育園として社会的にも話題を呼んだ三菱重工 キラキッズ保育園などの2件には、当社の技術アピールや企業イメージ向上に大きく貢献したとして特別賞/イメージアップ賞が与えられた。

 今回の受賞案件は次の通り。

【新製品賞】
1. 舶用ハイブリッド過給機
2. 原子炉容器出入口管台高速化インレイ装置
3. 10式戦車
4. サブエンジン式陸上輸送用冷凍ユニット 

【新業務プロセス賞】
1. 新型潜水艦「はくりゅう」における3次元情報統合システム適用による業務プロセスの改善
2. 遠隔監視システムを用いたガスタービンプラントの異常診断
3. 統合鋳造シミュレーション技術による新型ガスタービン車室の生産性向上
4. 現地工事への3次元計測適用による高精度据付工法の確立
5. ターボチャージャ工場新設におけるショートリードタイム生産プロセス構築への取り組み
6. EPC工事における科学的な安全管理の取り組み
7.  交通システムプロジェクトにおけるオペレーション・メンテナンス事業の確立
8.  陸用ボイラ・空制装置・射出成形機のVSM活動による生産性向上

【特別賞/新技術賞】
1. 1600℃級次世代ガスタービンを実現する高耐熱遮熱コーティング技術
2. ヘリコプター用ターボシャフトエンジン向けコンパクト・高性能2段圧縮機を実現した数値シミュレーション技術
3. MRJ主翼耐雷(防爆)開発・設計・証明を実現可能とした大規模シミュレーション技 術

【特別賞/イメージアップ賞】
1. 空気潤滑システム
2. 三菱重工 キラキッズ保育園

 受賞案件の概要は次の通り。( )内は担当部門。

【新製品賞】
◇舶用ハイブリッド過給機
(長崎造船所/長崎研究所)
 船舶用ディーゼルエンジンの過給機本体に高速発電機を内蔵。エンジンの余剰排ガスを過給機コンプレッサの駆動とともに最大750kWの発電にも活用する。航海中に必要な電力を賄え、別置きのディーゼル発電機が不要になるため、最大約3%の省エネ(燃料節約)・CO2排出削減に寄与する。


 
【ハイブリッド過給機】

 

◇原子炉容器出入口管台高速化インレイ装置
(神戸造船所/高砂研究所/広島研究所/原子力サービスエンジニアリング株式会社)
 原子炉容器出入口管台の応力腐食割れを予防保全する、安全かつ高精度・効率的な工事技術を開発した。最新のロボットアーム技術を駆使することで、肉盛溶接を遠隔操作により複数同時施工でき、その結果プラント停止期間が短縮するとともに、プラント信頼性が向上する。


 
【原子炉容器出入口管台高速化INLAY装置イメージ】

◇10式戦車
(汎用機・特車事業本部/長崎研究所/高砂研究所/広島研究所/名古屋研究所/冷熱事業本部/名古屋誘導推進システム製作所)
 世界で初めて戦車の可視系視察照準にハイビジョンカメラを用いたモニター照準方式を採用し、目標追尾性能の高精度化をはかったほか、戦場における敵・味方に関する情報を部隊内でリアルタイムに共有する機能を追加した。また、従来比10%以上の軽量化に加え、変速操向機に油圧ポンプモーターによる無段階自動変速機構を採用することで旋回性能など機動性を高め、戦闘力を大幅に増強した。

◇サブエンジン式陸上輸送用冷凍ユニット
(冷熱事業本部/名古屋研究所/中菱エンジニアリング株式会社)
 近年の輸送用冷凍機に対する環境性能向上要求に応えるために、世界初となる当社独自のガスインジェクション付き3D(3次元)スクロール圧縮機とエコノマイザサイクルの組み合わせにより、クラス最高の燃費性能(従来機比35%減)、冷凍能力(同24%増)、低騒音(69デシベル)を業界最小サイズで実現した。この圧縮機は、周(横)方向に加え軸(縦)方向にも3次元的に圧縮する機構と、一度圧縮された冷媒の一部を減圧して内部熱交換後に圧縮機に戻すガスインジェクション機構により、小さな動力で大きな冷凍能力を引き出している。


 
【陸上輸送用冷凍ユニット「TU100SA」】

【新業務プロセス賞】
◇新型潜水艦「はくりゅう」における3次元情報統合システム適用による業務プロセスの改善

(神戸造船所/MHIシーテック株式会社)
 3次元CADを全面適用し、設計・物流・建造・検査といった潜水艦の建造プロセス全体にわたる情報統合データベースを造船界で初めて構築・運用した。


 
【はくりゅう】

◇遠隔監視システムを用いたガスタービンプラントの異常診断
(高砂製作所/高砂研究所)
 ガスタービンプラントの遠隔監視に品質工学(マハラノビス・タグチ・メソッド:MT法)を適用。異常診断を自動化することで、監視効率の大幅な改善と異常の早期発見を可能にした。MT法はパターン認識の手法で、人による診断に比べ3倍以上の項目に対応でき、従来は難しかったアラーム発生前の小さな兆候まで検知できる。

◇統合鋳造シミュレーション技術による新型ガスタービン車室の生産性向上
(高砂研究所/長崎造船所/神戸造船所/高砂製作所)
 ガスタービン車室などの大型鋳物では、鋳造欠陥の溶接補修、仕上げなどに大きな労力を必要とすることがある。今回、注湯から凝固・冷却過程での鋳造欠陥を抜本的に抑制するため、湯流れ、凝固、熱応力に関するシミュレーションの統合技術を開発。新型のガスタービン車室に適用して高品質を確保し、生産性を向上できた。

◇現地工事への3次元計測適用による高精度据付工法の確立
(神戸造船所)
 高精度3次元計測器(レーザートラッカー)適用により原子力発電所などの海水配管を取り替える際の工程短縮と製品品質の向上を実現した。その手法として、現地で高精度3次元計測により複雑な配管の立体構造データを短期間で高精度に測定し、これを基に工場製作ステップごとに配管切断および継ぎ手面の最適加工寸法を割り出して配管形状を確認する工法を確立した。さらに大型冷却機のフランジ部締め付け管理にも、同技術を水平展開済み。

◇ターボチャージャ工場新設におけるショートリードタイム生産プロセス構築への取り組み
(汎用機・特車事業本部/Mitsubishi Turbocharger Asia Co., Ltd.)
 グローバル生産拠点として、自動車メーカーからの高い要求レベルに対応するため、最適な生産プロセスを構築し、資材調達から組み立て・出荷までの短納期化を実現。

◇EPC工事における科学的な安全管理の取り組み
(環境・化学プラント事業部)
 現地工事における安全の確保に向けて、日々の安全活動をデータ化することで、予知指数による安全管理手法適用し、事故発生予想項目・地点の事前対策を講じることが可能となった。

◇交通システムプロジェクトにおけるオペレーション・メンテナンス事業の確立
(三菱重工交通機器エンジニアリング株式会社/交通・先端機器事業部)
 当社APM(全自動無人運転車両)システム初の本格的O&M(Operation & Maintenance:運転および保守)事業をシンガポールチャンギ空港APMシステムで受託し、低コストで質の高いO&Mビジネスモデルを構築した。

◇陸用ボイラ・空制装置・射出成形機のVSM活動による生産性向上
(技術本部/交通・先端機器事業部/長崎造船所/三菱重工プラスチックテクノロジー株式会社)
 バリューチェーン個々の業務プロセスのリードタイム・経費について、目標利益から逆算で割り付け、それを遵守することで生産性向上につなげる手法VSM(Value Stream Map:モノと情報の流れの見える化手法)を、陸用ボイラ、空制装置、射出成形機の製造現場へ展開。リードタイム、仕掛かり・在庫の削減を実現している。

【特別賞/新技術賞】
◇1600℃級次世代ガスタービンを実現する高耐久性遮熱コーティング技術

(技術本部/高砂研究所/高砂製作所)
 遮熱コーティング皮膜中の欠陥の低減で厚膜化を可能とし、遮熱性を向上させた高耐久性遮熱コーティング技術を開発。タービン入口温度が1600℃に達する次世代J形ガスタービンでも、同1500℃級のG形ガスタービンと同等の耐久性を実現した。

◇ヘリコプター用ターボシャフトエンジン向けコンパクト・高性能2段圧縮機を実現した数値シミュレーション技術
(技術本部/長崎研究所/高砂研究所/名古屋誘導推進システム製作所)
 ターボシャフトエンジンの圧縮機全段数一体で流動解析シミュレーションを行うことにより、試験検証時間を大幅に削減。これにより、斜流圧縮機インペラインデューサ干渉低減、遠心圧縮機インペラインデューサ最適形状導出が可能となり、世界トップクラスのコンパクトかつ高性能な2段圧縮機の実現に貢献した。

◇MRJ主翼耐雷(防爆)開発・設計・証明を実現可能とした大規模シミュレーション技術
(技術本部/先進技術研究センター/高砂研究所/広島研究所/横浜研究所/名古屋研究所/名古屋航空宇宙システム製作所/三菱航空機株式会社)
 次世代リージョナルジェット機MRJの開発において重要な安全性証明の一つである主翼内燃料タンクへの落雷時の防爆性証明のため、雷電流分布を予測する大規模シミュレーション技術を開発。 防爆構造の設計標準化と合わせ、従来は経験と推測に頼っていた試験部位と条件の決定を論理的に行う証明手順を確立し、安全な飛行機実現に必要な開発期間の大幅短縮に貢献した。

【特別賞/イメージアップ賞】
◇空気潤滑システム

(長崎造船所/長崎研究所/船舶・海洋事業本部)
 船底から気泡を吹き出すことにより、船の摩擦抵抗を低減し、推進性向上をはかることで航海に必要な燃料消費量を削減。モジュール運搬船に実際に搭載して世界初の実証実験に取り組み、省エネ目標10%を上回る12%超の燃費削減・CO2削減効果を検証した。

◇三菱重工 キラキッズ保育園
(長崎造船所)
 仕事と育児を両立しやすい職場環境づくりに向けて、CSR(企業の社会的責任)活動の一環として、長崎造船所内に開設。「男女共同参画」「仕事と家庭の両立支援」など日本が直面する社会問題に対する当社のスタンスを示すことができた。

担当窓口:企画部

 


Tags: 経営,アジア,コーポレート
mission_net_zero

三菱重工グループについて

三菱重工グループは、エンジニアリングとものづくりのグローバルリーダーとして、 1884年の創立以来、 社会課題に真摯に向き合い、人々の暮らしを支えてきました。
長い歴史の中で培われた高い技術力に最先端の知見を取り入れ、カーボンニュートラル社会の実現 に向けたエナジートランジション、 社会インフラのスマート化、サイバー・セキュリティ分野 の発展に取り組み、 人々の豊かな暮らしを実現します。

詳しくは: