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和歌山下津港海岸で直立浮上式防波堤の現地工事に着手
~ 津波時にのみ防波堤が浮上する世界初の技術を導入 ~

株式会社大林組
東亜建設工業株式会社
三菱重工鉄構エンジニアリング株式会社
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 株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:白石 達)、東亜建設工業株式会社(以下「東亜建設」本社:東京都新宿区、社長:松尾 正臣)、および三菱重工鉄構エンジニアリング株式会社(以下「MBE」本社:広島市中区、社長:東 完夫 ※三菱重工業100%出資)は10月初旬、和歌山下津港海岸の海南地区において、3社共同で受注した直立浮上式防波堤築造工事の現地工事に着手します。

 直立浮上式防波堤は、津波来襲時に素早く浮上して港内・沿岸部の防災・減災に貢献することができる世界初の可動式鋼管防波堤です。全体工事は2020年春までに完成する計画で、このうち3社は航路隣接部の一部で実証実験を兼ねて防波堤を建設します。

和歌山下津港海岸で直立浮上式防波堤の現地工事に着手<br/>~ 津波時にのみ防波堤が浮上する世界初の技術を導入 ~
 直立浮上式防波堤は、海底面下に一定の間隔で壁状に設置した下部鋼管の中に、それより直径の小さい上部鋼管が格納されており、津波が来襲したときなど、異常時にだけ海底から上部鋼管が浮上し、防波堤の役割を果たします。送気管から上部鋼管内部に空気を送り込むと、浮力で上部鋼管が海面上に浮上する仕組みです。また、排気すると自重により、海底へと沈降していきます。

 このように、施設全体を海底面下に格納することで、従来は防波堤設置が不可能であった港口部、河口部にも防波堤を設置でき、緊急浮上させることにより津波の侵入を抑制できます。もちろん、船舶の航行にも支障はなく、潮流の変化など新たな環境負荷もなく、景観が変わることもありません。また、地震に強く、鋼材の腐食や劣化が極めて少ない環境にあるため、維持管理も大幅に省力化できます。浮上・沈降を送気と排気で行うシンプルな方式を採用しているため、緊急時の確実な作動と、数分程度で浮上する素早い対応を可能としました。

 同技術の開発には3社と新日鉄エンジニアリング株式会社(本社:東京都品川区、社長:高橋 誠)の民間開発グループ4社および独立行政法人港湾空港技術研究所が参画しています。
 当築造工事の事業主体は、国土交通省近畿地方整備局で、「和歌山下津港海岸 海南地区津波対策事業」の一環として、港湾入口の航路部分に総延長230mの可動式防波堤を建設する計画です。今回受注した工事では、航路隣接部の約10mを対象に、海面下13.5mから海面上7.5mまで、10分以内で浮上する設備を築造する予定です。大林組、東亜建設、MBEの3社で組織した共同企業体(JV)が工事を実施しており、中核構造物となる上部・下部鋼管は、新日鉄エンジニアリングが現地工事に向けて鋭意製作中です。

 和歌山下津港海岸海南地区は、紀伊水道に面したリアス式海岸の湾奥に位置する地形的特性から、これまで1946年の昭和南海地震や1960年のチリ地震などにより、深刻な津波被害を受けました。また、今後30年以内に高い確率で発生することが予測されている東南海・南海地震などでは、現状の防潮堤高さをはるかに超える津波の襲来も予測されており、その津波の浸水予測地域には、住居地区に加え、行政・防災機関や主要交通網があり、臨海部には企業も立地していることから、津波対策が望まれていました。しかし、従来の護岸のかさ上げ対策では船舶の荷役などへの支障が大きいことから、複数の可動式防波堤について技術検討が行われ、通常時は航路への影響がない「直立浮上式防波堤」を港口部に配置して、浸水予測地域の前面で防護ラインを形成する津波対策事業を進めることになりました。

 大林組、東亜建設、MBEおよび新日鉄エンジニアリングの4社は、今回の実績を足掛かりとして、直立浮上式防波堤による津波対策に関する提案を積極的に展開し、防災・減災に貢献していきます。 また、本工法の特長を活用して、港口部から侵入してくる高波に対する港内静穏度対策や高潮対策の実用化にも取り組んでまいります。

【工事概要】
工事名称:和歌山下津港海岸(海南地区)船尾側津波防波堤(直立浮上式)築造工事
事業主体:国土交通省近畿地方整備局
工    期:2011年11月 ~ 2013年 2月(16ヵ月)
規    模:施工延長 L=10m、上部鋼管 φ2,800 mm– 3本、下部鋼管 φ3,000mm – 3本


【参考】直立浮上式防波堤の作動ステップ図

 担当窓口:三菱重工鉄構エンジニアリング株式会社


Tags: インフラ・鉄構,アジア,I&Iドメイン
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