三菱重工技報
    Vol. 41 No. 1 (2004)   豊かな社会に貢献する新製品·新技術特集
    特集 技術論文

    先進技術で自動車の低公害化に貢献する三菱ターボチャージャ

    Mitsubishi-Turbocharger for Lower Pollution Cars

    恵比寿 幹
    Motoki Ebisu
    寺川幸治
    Yukiharu Terakawa
    茨木誠一
    Seiichi Ibaraki
    恵比寿 幹
    寺川幸治
    茨木誠一

    ターボチャージャ(以下ターボ)は,内燃機関,特にディーゼルエンジンの燃焼効率を高め,出力増加に貢献する機器として長い歴史を持つものであり,当社でも舶用,自動車用を中心に広く生産してきた.
    当社では昭和37年に当時の大井工場で生産を開始して以来,性能と品質が評価され,海外ではオランダの MEE(Mitsubishi Equipment Europe B.V.)を拠点としてVOLVO,SAAB,BMWに,また米国MENA(Mitsubishi Engine North America)からはダイムラークライスラーに,韓国の提携先(株)啓洋精密からは現代自動車に,国内では三菱自動車工業(株),三菱ふそうトラック·バス(株)のほか富士重工業(株),いすゞ自動車(株)を始め,各社に納入され,年間生産台数170万台,生産累計台数は2001年に1 000 万台に達した.
    当初,ターボは出力向上を目的として搭載されてきたが,近年はそれに加えて,燃料消費率を向上させることが可能になる点や,排気をクリーンに保てる効果が着目されるようになってきた.近年,乗用車及びトラック向けの排気ガス規制は世界的な潮流となり,欧州ではEUROⅣ(2005年施行予定の欧州における排ガス規制),国内でもディーゼル新短期(同2004年),長期規制(同2006年)が導入されることとなった.また,中国や韓国など,直接これらの規制が適用されない国も,対象地域への輸出を考慮すると,これらの規制を満たす必要がある.このため,ターボ装着は必須の条件になり,ターボ装着率は更に上昇が見込まれる.
    しかしながら,年々厳しくなる燃費,排ガスの規制を満たすためには,従来の技術では対応しきれない場合も出てきた.このような市場の要求に対応すべく,当社はさまざまな先進技術の開発に取り組んでいる.ここでは, 可変容量ターボ, 過渡応答性向上技術, 高排温対応技術,の3つの技術について説明する.